第4回 10月28日東京イギリス大使館でのイベント内容レポート

イギリス大使館に、インテリア先進国英国から10人のインテリアデザイナーがやってきました。
豊かな人生をインテリアとともに歩く英国人の生き方を支えるデザイナーたち。
彼らはどんな場面でどんなインテリアを提案するのか。
それはこれからの日本のインテリアにどんな考え方をもたらしてくれるのか。
イベントとデザイナーの仕事の紹介から、インテリアの面白さを探ってみましょう。

 

英国のインテリアデザイナーとその仕事

前3回のシリーズで、英国の寿命の長い住宅とそこでの暮らしかたのお話を進めてまいりました。
英国では住宅の寿命が数百年単位と大変長く、その結果住宅の価値が経年によって下がらず、インテリアのグレードによって売買価格までが大きく左右されます。
それほどインテリアが住宅の価値そのものとして重要なのです。
そのインテリアを作るプロが、私たちインテリアデザイナーです。

英国では、インテリアデザイナーが住宅の改装の仕事をする際には、以下のような目的が一般的です。

  1. 新しいオーナーのもとで、オーナー自身が居住するために、そのオーナーの好みにインテリアを作り上げる。
  2. オーナーが投資用に買った物件を賃貸用にデコレーションする。
  3. あえて状態のあまり良くない物件を購入し、それをデザインしなおし、価値を高め、プレミアムを付けて販売するため、デザインを行う。
  4. マンションや建売住宅などのモデルルームをデザインする。

1の場合には、オーナーの個性とデザイナーの個性がぶつかり合ってユニークなデザインを生み出します。生活に直結しますので、創意工夫も生まれます。また、英国の人々は、ヤドカリのように年齢や家族の成長に伴って、家を次々と買い替えていきますので、買ったときにいいデザインで改装や増築を行い、次に売る時に価値が上がっている改装を行うという目的もあります。多くのオーナーはこの改装を行った後にもう一度不動産屋を入れて、改装後の査定を行います。その時にどのくらい価値が上がっているかがインテリアデザイナーの腕の見せ所となります。空間を整え、デザインをし、フィニッシングタッチでインテリアのグレードを上げるのです。私も何軒かこの査定を経験しましたが、幸いいつもクライアントには大変喜んでいただきました。ちなみに例としては、約1億2千万で購入した築120年の物件に3千万円をかけて改装を行い後査定が2億円、約3億円で購入した築200年の物件に4千万円で改装を行い後査定が4億4千万円、約1億6千万円で購入した築100年の物件に3千万円で改装を行い後査定が2億6千万円、などです。(ただこれらは2008年以前の数字なので、現在はこんなにうまくはいかないでしょう。)

2の場合には、賃貸用として不特定多数のクライアントを想定するため、あまり強い個性は追求されません。英国の場合多くがファニシングといって家具付き物件となりますので、基本的な家具やカーテン、リネン、ベッドウェアやテーブルウェアを一通りそろえます。ロンドンでは外国人が住むアパートメントでこのようなデザインを行う場合月額100万単位のアパートも多く、アパート間の競争も激しいため、早くいい借り手に恵まれるよう、賃貸といってもインテリアのグレードは大変高いものが多いのです。

3はあらかじめ転売を想定するものとなります。古くてくたびれた状態と、新しいインテリアでグレードを上げた場合には、上記1番のようにうまくすると価値が1.5倍ほどになることもありますので、その地域、ベッドルーム数などもっとも効率がいい投資のあり方を模索し、改装費用の2倍くらいのリターンがあるようにインテリアのグレードを調整します。リターンの割がいいのはボロボロからスタートすることなので、このような物件をデザインする際には、前後がまるで見違えるようになります。

4では新築物件も、古いビルを改装したいわゆるコンバージョンなどもあります。コンバージョンでは、もとは倉庫とか、ビクトリア時代の学校、果ては元発電所まで、住宅の改装ではなく、まったく違う用途からの転用の場合が多いのです。特に古くからの大型建築物を改装することが多く、とんでもなく天井が高かったりすることも多いため、ダイナミックで面白い空間を見つけることもできます。
これに対して新しい建物は、えてして天井が低く、空間のプロポーションも悪いので、デザイナーの仕事は如何にバランスよい空間に見せるか、ということが重要になります。

このように英国のインテリアデザイナーは住宅のデザインといっても、さまざまな用途や建物の種類に応じて、デザインのあり方を使い分けることを要求されます。
またその仕事は収益性に大きくかかわってきますので、そういった意味でも責任が重い仕事なのです。
日本で商業施設を行うインテリアデザインの仕事のコンセプトに近いかもしれません。

 

イギリス大使館に、英国から10人のインテリアデザイナーがやってきました。

さて、そんな英国のインテリアデザイナーの仕事を日本の皆さまにご紹介することを目的に、英国から10名の英国インテリアデザイン協会(BIID)インテリアデザイナーが使節として来日し、2009年10月28日にインテリアにかかわるプロの皆さまを集めて、英国大使館でイベントが催されました。(BIDA、英国大使館英国貿易投資総省共催、カリモク家具販売株式会社協賛)

英国大使館正門から


日本のクライアントと英国のデザイナーを結ぶマッチメイキングの様子


セミナーは大盛況


代表団の面々が皆様に紹介されました

このイベントを通じて、施主の皆様にはBIIDデザイナーを、プロフェッショナルの皆様にはBIIDプロダクトを、そしてプロとして世界の舞台でステップアップを目指す皆様にはBIIDへの参加の道をご紹介しました。
使節団の活動はこれだけにとどまらず、100%デザイン東京をはじめとしたさまざまな会場での講演、パネルディスカッションも催され、数多くの皆さまとお話する機会を得ることができました。

BIIDジャパンミッション2009

英国インテリアデザイン協会の役割

BIIDに所属するデザイナーは約2000名。厳しい審査を経た入会から、実績とともに上位グレードに上がるピラミッド型昇格システムを持ち、最上位300名ほどの正会員の多くは、文字通り世界をまたにかけて活躍しています。BIIDインテリアデザイナーの多くは住宅、商業施設を問わず、またプロダクトデザインも手掛けます。プロジェクトでは顧客とのインターフェイスとなり、デザイン、コンサルティング、施工チームの編成、プロジェクトのディレクターとして、そしてアートディレクションやフィニッシングタッチに至るまで、常に牽引役を果たします。市場に大きな影響力を持つセレブデザイナーを多く擁し、ダイナミックな英国のインテリアデザイン市場を、さらには世界のインテリアトレンドに大きな影響力を発揮しています。
BIIDには家具やファブリック、壁紙、照明、アクセサリーなどの一流メーカーもコーポレイトメンバーとして数多く所属しています。英国のプロダクトデザインの伝統を受け継ぎながらも、常に新しいデザインへ挑み、毎年新しいトレンドを生み出し続け、インテリ市場のダイナミズムに貢献しています。
さらに英国を代表する世界的にも有名なインテリアメディアやカレッジも多数所属します。英国のデザイン教育は世界的にも定評があり、日本からも多数の学生が学んでいます。その多くが今日本でインテリアデザイナーとして活躍しています。 http://www.biid.org.uk

英国のデザイナー達が得意とするデコラティブインテリアデザインの分野は、日本ではまだまだ未開発といえます。そのデザインづくりには、建築やデコラティブアート、そして世界のプロダクトトレンドへの深い造詣が必要です。こうして完成したデザインは、プロとしての知識に裏付けられ、豊かでバランスのとれた、高い完成度を誇ります。そして何より、デザイナーのクリエイティビティと個性を強く反映する自由な精神にあふれています。まさにこの分野こそが、今日本のインテリアデザインの発展に求められている方向性であると、多くの専門家も指摘しています。

BIIDが世界最高峰のインテリアデザイン集団といわれるゆえんは、学問として確立したインテリア教育、さらにヨーロッパの建築やマーケットのダイナミズムを背景に、デザイナー達がしのぎを削って切磋琢磨する環境を擁しているからです。そして何より、そのメンバーのほとんどが、プロのデザイナーとしてインテリアデザインビジネスを成功させているという実績があるからです。

BIIDの協会としての最も重要な役割は、このビジネスを、マーケティング、教育、そして法的な側面から実質的にサポートすることです。世界中から年間1400万件(2006年実績)のアクセスを誇るBIIDのウェブサイトでは、インテリアデザイナーやプロダクトを検索することができ、デザイナーと世界中のプロジェクトを結びます。年間40回以上を数える教育プログラムや上位者からのアドバイスセッションは、プロとしての成長を助けます。保険システムや法律ホットラインはメンバーのビジネスを守ります。そして何よりBIIDに所属すること、メンバー間の交流は、強力なプロとしてのバックボーンとなってくれるのです。
英国では、インテリアデザイナーは弁護士や銀行家なども目指す、憧れの職業の一つです。30年前にはまだ一般的とは言えなかったインテリアデザイナーという職業を、今や世界に冠たる地位にまで押し上げたのは、BIIDの活動の賜物です。そしてその活動はメンバーのボランティアワークによって成り立っています。まさにデザイナーたちのプロ意識がこの活動、そして英国の市場そのものを支えているのです。

このたびのイベントでBIIDの活動とそのデザインを日本の皆様にご披露できることは、日本のインテリア産業にとっても、新しい産業分野と、インテリア市場規模そのものの拡大の可能性を生み出す、大変意義深いものとなるでしょう。

それでは次回以降は、このミッションに参加したデザイナーたちの仕事を中心に、さまざまなシーンでのインテリアデザインをご紹介していきたいと思います。