第5回 英国ミッションデザイナーたちの仕事 (1)

ヤドカリのように家を買い替え、新しい住宅を買うとまず行うことが、インテリアデザイナーとともに行う家の改装。デザイナーと行うからには、やはりドラマチックで美しい空間。
空間、家具、そしてアートやアクセサリー、全てを駆使して作り上げるのがインテリアデザイナーのマジックです。
家族や暮らしに合わせて、美しく、そして大胆に改装した事例を、英国デザイナーミッションの事例を中心にご紹介します。

前回ご紹介したBIID ジャパンミッション2009には以下の10名のBIIDインテリアデザイナーがミッションとして参加しました。

このメンバーの中から今回と次回に分けて数名ずつをピックアップし、そのプロファイルとともに、彼らが得意とするデザインをご紹介してみたいと思います。

今回ご紹介するデザイナーたちは、成熟した大きなマーケットを持つ、英国のインテリアシーンの中でも特に大きな成功を収めている、いわゆるセレブデザイナーと呼ばれる人々です。
彼らの仕事を通じて、インテリアデザインの可能性の一端をご紹介できればと思っています。

 

フィリッパソープ Philippa Thorp BIID

Thorp Design 代表
住所:10 Peterborough Mews, London, SW6 3BL
T : +44 (0)20 7731 6887
E : office@thorp.co.uk
Website :http://www.thorp.co.uk

Thorp Designは設立以来25年、インテリアデザイナーと建築家からなる、数々の受賞暦を誇るデザインオフィスです。
手がけたプロジェクトは、住宅をはじめ、レストランやヨット、プライベートジェット機、家具デザインに至るまで幅広く、有名メディア媒体の常連でもあります。
歴史的建築物や貴族のマナーハウスを初めとする超高級物件を数多く手がけており、その完成度の高さは、エスタブリッシュされた裕福層からも絶大の人気を誇っています。

上記はマナハウス。建築家も含む25人ものデザインオフィスを率いて、規模の大きな建物の大改造も行います。
フィリッパならではの品格が漂うエレガントなデザインがいかんなく発揮されています。
彼女は空間でのアートの使い方も大変にうまく、お手本にできるところがたくさんあります。

モダンなオブジェクトと絵画が、クラシックなセッティングにこんなにも良く合うことに気づかせてくれます。
そして、緑と金に黒を加えたカラースキームが秀逸です。
ちなみに多くのインテリアデザイナーが自分の家具やアクセサリーのレンジを持っていますが、右の写真の丸テーブルはフィリッパ自身のデザインによるものです。

上の写真ではソファ、サイドテーブル、テーブルランプ、絵画、ウォールライト、そして壁のパネル仕上げ、すべてにおいて違うスタイルなのです。お気づきになりましたでしょうか。それでもここまでデザインとしてまとめあげる力は、同じデザイナーから見ても、お見事、としか言いようがないうまさです。

木と壁紙に出てくる色合いのコンビネーション、アンティークとモダンアートとの組み合わせも秀逸ですね。

また、以下のように近いテイスト同士をまとめて、均整のとれた、リッチなデザインも数多く発表しています。ちなみに以下の2枚に出てくる家具もフィリッパ本人のデザインです。

一流のインテリアデザイナーはプライベートジェットやヨットなどもデザインしますが、彼女も数多く手がけています。プライベートジェットとヨットのデザイン経験があることは、デザイナーにとっても一流の証と言えるのです。

次に次世代のセレブデザイナーとして頭角を現しつつある、2人のデザイナーをご紹介したいと思います。

 

サイモン ハミルトン Simon Hamilton BIID


Simon Hamilton & Associates Ltd.代表
住所: The Studio, 22 Malvem Road, London, E8 3LP
T : +44 (0)20 7275 0285
E : simon@simonhamilton.co.uk
www.simonhamiltonassociates.com

20年のキャリアを持つ。住宅空間から、商業施設に至るまで総合的なインテリアデザインのコンサルティングサービスを提供。近年海外のプロジェクトも多く手がけており、英国、フランス、イタリアにおいてオフィス、住宅、ホテル、アパートなどのデザインを手がける。
ロンドンデザインの新たな中心地になりつつあるイーストロンドンにオフィスを構え、カッティングエッジでスタイリッシュなデザインテイストで、近年活躍が著しいインテリアデザイナーの一人である。
昨年のデザインミッション参加に続き、2度目のミッション参加となる。
BIDA国際コミッティメンバー。

サイモンのデザインの特徴は、何といっても独特のカッティングエッジでありながら、ポッシュな雰囲気を兼ね備えたデザインといえます。

色、素材使い、そしてアートやフォルムのバランスなど、独特で力強い、サイモン独特の感性を見ることができるデザインです。

上はベネチアのホテルのレセプションから。何ともポップでランダムな空間です。せまい空間にこれだけの要素を加えることを怖がらずにバランスが取れるのも見事です。

サイモンが活動するロンドンのイーストエンドは、ロンドンのシティで働く独身や若いカップルが集まるところ。(ロンドンではシティで働くプロフェッショナル=お金持ちの象徴)そんな若いクライアントのための、コンテンポラリーでもクラス感は無くさない、彼なりの感性が評価されるのです。

 

エイドリアン チン Adrienne Chinn BIID


Adrienne Chinn Design Company Ltd代表
住所: C216 Trident Business Centre, 89 Bickersteth Road, London SW17 9SH
T : +44 (0)20 8516 7783
E : adriennechinndesign@hotmail.co.uk
www.adriennechinn.co.uk

10年にわたるジャーナリストの仕事を経て、インテリアデザイナーに転身。
ホテル、レストラン、ショームームや高級住宅を中心に、英国のトラッドをベースに持ちつつも、カラフルでモダンな質の高いインテリアが人気を集めている。最近完成させたプロジェクトは、スコットランドのビクトリアスタイルホテルの全面改装で、現在は、ショールームや、エジプトのカントリークラブ、モロッコのホテル、そして、英国、カナダ、香港、上海の高級住宅のデザインと多くのプロジェクトを進行させている。
又、昨年Adrienneが手がけたThe Home Decorator‘s Colour and Texture Sourcebookというインテリアデザインの本は、20カ国語に翻訳されて世界中にて販売されている。インテリアデザイン修士号を所持。

上記はエイドリアンのデザインの特徴を代表する、色とパターン使いの華やかさがよく表れたデザインで、英国のモダンを好む特に女性に好評です。
インテリアデザイナーは時に自分がターゲットとするクライアント層を、強く意識してインテリアデザインを行うことも必要です。
彼女はジャーナリストとしての経験から、そういったマーケッティングの知識に卓越しています。このことが彼女の色に対するこだわりや、現在世界25カ国以上に翻訳された彼女の本のヒントの源にもなっているのでしょう。

色使いの得意なデザイナーは数多くいますが、彼女の色遣いは、まさに英国のキッチュを詰め込んだような色。同系色にとどまらず、さまざまな色を取り合わせて、でも英国らしい品のよさや落ち着きも残した、絶妙のバランスが信条です。

それでは、彼女の色の世界を堪能してください。


渋い中間色のベースにアクセントカラーをうまく対比させた例です。


何ともキッチュな色遣い。本の色もアクセントです。

タータンチェックやストライプと色のコンビネーションが生きています。

 

デザイナーが作るもの

フィリッパソープ、サイモンハミルトン、そしてエイドリアンチン、それぞれにデザインのテイストがはっきりと異なるインテリアデザイナーたちの仕事を見ていただきました。

彼らが作り上げようとしている世界は、何々風、何々スタイルなどという、何かのまねごとではなく、その作品を見ただけで、そのデザイナーのものとわかるような、明確なステイトメントを持ったデザインです。
彼らのデザインは、市場への影響力を持ち、マーケットをけん引し、また新しいインテリアのアイディアやトレンドを生み出す原動力となっています。

こういうインテリアデザイナーたちが数多く活躍するからこそ、イギリスのインテリアデザインは面白いのです。

さて次回は、また別なフィロソフィーを持ったデザインを展開するデザイナーたちにスポットを当て、さらなるインテリアデザインの可能性をご紹介したいと思っています。