第6回 英国ミッションデザイナーたちの仕事 (2)

さて、前回は英国デザイナーミッションのうちの3名の仕事をご紹介しましたが、今回はさらに3名の仕事を中心にご紹介します。

今回ご紹介するのは、以下の3名です。

  • 英国のセレブなインテリアデザインを数多く手がけながらも、チャリティや教育にも熱心に取り組むガイオリバー。彼の作品には空間を美しくつくりつつも、実用的な工夫も見ることができます。
  • 日本への駐在経験も持ち日本を洋のデザインに巧みに取り入れる ダグ アタレイ
  • 円熟を迎えたインテリアデザイナーはこれほどにも自由でわくわくするデザインができるということを見せてくれる スティーブン ライアン

それぞれ全く違うテイストのデザインを作り出す3人の作品をお楽しみいただきましょう。

 

ガイ オリバー Guy Oliver BIID

Oliver Laws Limited 代表
住所: 9/10 Savile Row, London, W1S 3PF, UK
T : +44 (0)20 7437 8487
E : enquiries@oliverlaws.com
Website :http://www.oliverlaws.com

ハイクオリティーなトラディッショナルスタイルをベースにした彼独自のスタイルで、首相官邸、宮殿や大使館、ホテルなどを含む歴史的建築物のインテリアデザインから、モダンアパートメント、ラグジュアリアスなヨットや飛行機に至るまで、手がけたプロジェクトは多岐に渡る。ヨーロッパ各国、アメリカ、中東、北アフリカ、日本と世界各国にクライアントを抱える。チャリティー団体であるUK Pattern Archireの代表としても活動すると共に、各教育機関においてレクチャーを行ったり、メディア媒体にデザインに関する記事を掲載するなど、幅広く活躍している。最近のプロジェクトでは、ロンドン中心地にある5つ星ホテルConnaughtの改装が大きな話題を呼んだ。

ガイの手がけるプロジェクトは、このようなマナハウス(貴族の館)も多い。
以下は古くからの内装のように見えるが、実は新しいオーナーのために一度まっさらな状態にして、新しく作り直したインテリア。いかにもぴかぴか、という風には見せないのが重要なポイント。家具もリプロダクションや本物のアンティークをソーシング[探し出す]する。

以下の写真もいかにも熟成した雰囲気を醸し出しているが、じゅうたんや椅子、家具や建具全て彼自身のデザインで特注したもの。
特に右に見える本棚は、実は本は革の背表紙の本のフェイクで、前にせり出した部分全体が大きく開き、中にはテレビやオーディオ機器が格納されている。最近ロンドンのインテリアデザイン界でも台頭著しいロシア人のクライアントがオーナーのマンション。右の写真の飾り棚も、コレクションに合わせてデザインした特注品。

ガイオリバーは昨年リニューアルオープンしたコンノートホテルの改装も手掛け、大きな注目を浴びた。コンノートホテルのインテリアは、客室部分がガイ、そしてレストランやバーは日本でも人気のディビッドコリンズが手掛け、今ロンドンでは最もホットなインテリアスポットといわれている。

以下は、ガイが手掛けた客室から。もともとこのホテルにアンティークとしてあったキャビネットのレプリカをバーキャビネットに仕立てたもの。
しかるべきグレードのインテリアでは、テレビなどの電気機器やファンクション部分は外に見せないことがその格を維持するためにも重要である。そのテクニックがガイのデザインの随所にみられる。

このホテルはグレード2スターという厳しい建築規制がかけられており、壁の装飾、巾木の形状など、オリジナルの建物にあった装飾への変更は許されない。この改装でも、18世紀のオリジナル装飾とモダンなインテリアの融合が随所にみられる。

ヒストリカルなエレメントとモダンなインテリアの融合は、イギリスで活躍するインテリアデザイナーたちの真骨頂でもある。以下の写真でも上品でありながら何ともこなれた、クラシカルモダンインテリアの進化形を見ることができる。

ガイは長年にわたり、チャールズ皇太子が進めている紛争に巻き込まれた国の技術復興プログラムを提供するチャリティ活動にも深くかかわっている。
以下の写真は、コンノートホテルの最上階に新しく作られたペントハウスのインテリアであるが、そこで見られる伝統的なウッドワークやカービングは、実はアフガニスタンの木工職人たちによるものである。ご存知の通り、内戦と外国からの侵攻により、アフガニスタンでは各産業で技術を継承することが難しいほどの厳しい経済状況にある。古くからあった彫刻を施す木工技術も例外ではなく、チャールズ皇太子は、これからの国造りのために職業訓練校を作り、これらの技術を復興し、新たな職人を育成するプログラムを推進しているのである。これらのプログラムで育成された技術者がコンノートホテルの改修にあたり招聘され、建具、家具の製作とその加工を行っている。


左、上の写真はアフガニスタンの伝統的なカービングを施した天がいベッドとベッドサイドテーブル。
基本デザインはガイによるもの。

上はこの部屋に2か所あるドアウェイ。といってもドアウェイをフェイクしたバニティカウンターとバーキャビネット。機能を実現するためにデザインに妥協しない、というポリシーが貫かれている。また、ここでもアフガニスタンの伝統的な木工装飾をふんだんに見ることができる。

彼の作品を見ると、一人のインテリアデザイナーの、長年にわたる経験と、歴史的建築、そして世界各国のデコラティブアートへの理解、それらを自分のインテリアに投影する執念ともいえるこだわりを知ることができる。

 

ダグ アタレイ Doug Atherley BIID

Kinari Design Ltd.代表
住所: 29 Clarendon road, Holland Park, London, W11 4JB
T : +44 (0)20 7221 9569
E : info@kinaridesign.com
Website :http://www.kinaridesign.com

London, New York 東京にて世界有数の大手銀行に20年勤務した後、New York とLondonの大学にてインテリアデザインを学び、2002年にKinari Designを設立。
その経歴をから、クライアントの多くは、金融関係や、法律家、または実業家が多く、これまでに高級住宅や、ショップなどの商業施設を手がけており、ヨーロッパ、アメリカ、アジアやカリビアンにクライアントを抱えている。
彼のデザインは、在住中に受けた日本文化への感銘から, 日本のエレメントを根底に、コンテンポラリーな西洋スタイルと融合させたシンプルクールを表現するものが多く、西欧でのZenスタイルの人気もあって、いま台頭著しいデザイナーの一人である。
BIDA正規会員、昨年までマーケティング部門のダイレクターとして活躍した。アメリカIIDA正規会員、RIBA準会員。

ダグのデザインの特徴は、クリーンでカッティングエッジなデザインでありながら、英国のエスタブリッシュされた品格を失わないことであろう。

以下の写真でも、アースカラーのモノトーンが基調でありながら、トラディショナルなエレメントを分量良く加えることによって、安心感を与える品格でまとめあげる好例を見ることができる。そしてそこはかとなく感じられる和の空気感も興味深い。Zen StyleやEast meets Westというコンセプトを掲げるインテリアデザイナーは数多くあるが、ダグは彼独自の解釈を持っているのである。


 

スティーブン ライアン Stephen Ryan BIID

Stephen Ryan design & decoration 代表
住所:7 Clarendon Cross, Holland Park, London, W11 4AP, UK
T :+44 (0)20 7243 0864
E : info@stephenryandesign.com
Website :http://www.stephenryandesign.com

27年のキャリアを持ち、ロンドンの中心地Holland Parkにオフィスとショップを構える。手がけたプロジェクトは高級住宅から、ホテル、ショールーム、オフィス、宮殿からヨットに至るまで多岐にわたり、英国内を始め、ロシア、フランス、ギリシャ、バミューダ諸島、スリランカ、アメリカとインターナショナルに活躍する。世界各国のメディア媒体への露出も多数。
インテリアアクセサリーのブランドを持ち、またインテリアデザインにおいては、住宅から商業施設、コンテンポラリーからトラディッショナルなスタイルまでそのプロジェクトは幅広く、特にアーティスティックで大胆なアクセサリーづかいのデザインスタイルに定評がある。25年前のホテルオークラのインテリア改装にもかかわった。

スティーブンは私が最も尊敬するインテリアデザイナーの一人でもある。というより今まで数多くのインテリアデザイナーと特にBIIDを通じて接してきたが、そのデザインのレベル、そして人間的にも一番尊敬できるインテリアデザイナーであり、私自身の目標ともいっていい。
彼の持っている目、デザインの芸術性の高さ、その自由さ、面白さにおいて、彼は世界最高のレベルにある。英国では大変評価が高いにもかかわらず、本人の奥ゆかしさからか、世界的な知名度があまりないのは残念なことである。今回代表団に参加してくれたことで、日本の皆さまに初めて紹介できる機会を持てたことは、私にとってこの上ない喜びでもある。

まず以下の写真を見ていただきたい。空間の中で絵ができている。デザイナーにとって、空間をある角度から切り取ったとき、どこを見ても美しい絵ができていることは大変に重要なスキルである。また、その一枚の絵の中に自分が伝えたいテーマを表現できることも大切である。
スティーブンは、一枚の絵だけでそれを確実に表現し伝えることができるインテリアを作る。
例えば、以下の絵の中にはアート、椅子、テーブル、照明、壁照明、オブジェクトがあるが、それぞれ全く違うエレメントを持っていながら、集合体としてみたときのメッセージ性や力強さがある。この絵は、あざとさやどうだという気負いがないにもかかわらず、一度見たら忘れられないほどの強い印象を残す。まさに27年の経験が魅せる、円熟の技術である。

ロンドンでは、クレジットクランチで不況に入って以来、というよりも不況であるからこそ、価値が下がることがないアートやアンティークへの注目度が高まっている。インテリアデザイナーたちに要求される大きな役割の中に、アートディレクション(アートやアンティークをインテリアに融合させる、あるいはアートからインテリアをインスピレーションする)があるが、そのうまさにも感心させられる。
それらの作品を以下にいくつか見てみたい。

彼の作品は、インテリアはもっと自由でいい、もっと楽しくていい、もっと遊んでいい、と教えてくれるとともに、その可能性の大きさを見ることができ勇気づけられる。

 

いかがでしたでしょうか。

とても雰囲気の違う3人のデザイナーをご紹介しました。
この3人は、先週紹介した3人とも違いますね。
そしてこれは300名のBIID正会員の本当にごく一部にしか過ぎないのです。
まさに十人十色、千差万別なインテリアの表現があるのです。この十人十色が作り出すエネルギーが、英国、そしてロンドンを世界のデコラティブインテリアデザインのメッカへと押し上げているのだと実感します。

住宅の寿命が200年住宅へと伸びるとき、空間が持つ意味がますます高まってくると思います。
建物としての価値を落とさないメンテナンスの中で、住人一人ひとりがその箱の中身を高め、次世代へとつなげていく。そのたゆまない循環が価値の高い集合住宅を作り上げていくのです。

また見方を変えれば、数百年に及ぶ長寿住宅への取り組みが、今の英国のインテリアデザインのダイナミズムの源であったと言えるのではないでしょうか。

6回にわたり、英国の長寿住宅と住宅マーケット、そこで活躍するインテリアデザイナーたちの仕事をご紹介してまいりました。

200年住宅の成功と今後の発展を祈念いたします。